円安が止まらない本当の理由
円安の話になると、「今アメリカがインフレでどんどん金利を上げている。だから金利格差でドルが強くなって、円が弱くなっている」ということが言われていますが、これは必ずしもそうではないんですね。
為替が動くのには様々な理由がありますが、私は昨年の7月頃から、「長期円安が始まり、50年間の円高が終わった」という話を既にしておりました。
これはどういうことかと言えば、日本経済全体が弱体化しているということです。
日本は元来、第2次大戦後、製造業の国として、経済を繁栄させてきました。そして、自動車や家電製品など、世界に負けない非常に魅力的な製品を、世界にどんどん売ってきました。
それが日本の黄金時代:70〜80年代だったわけです。
そういった、国際的競争力のある魅力的な製品を、日本は今、作ることができなくなってきているということ。そして、貿易収支は既にもう赤字ですし、経常収支も徐々に赤字化してくる体制です。そうすると、やがては海外に持っている資産を切り崩して、日本に戻して、何とか日本が生き延びていく。そういうプロセスにもう入ってきていると思います。
そして、食料やエネルギーは、輸入に頼っている部分が大きいですが、ウクライナ戦争や武漢コロナウイルスといった、パンデミックや戦争という危機状態になると、日本経済の弱点が露呈されますね。そういった状況が合わさって、今の円安ということに帰結しているのです。これは非常に長期的な話です。
円というものの強さは、基本的に何で決まるのかというと、やはり日本経済全体の強さです。
円の価値を支えているのは何かというと、円を持っている我々がどれだけ質のいいサービスや、製品を買うことができるのか?別の言い方をすると、日本経済がどれだけ質の良いサービスや、製品を生み出すことができるのか?というところに、長期的にはかかっているのです。
それが世界で競争力のある製品やサービスを生み出すことができなければ、円の価値が下がっていくというのは当然のことですね。ですから、長期の円安はなかなか避けられないと思います。
■円安をチャンスにする3つの条件
この為替というのは「経済の通信簿」で、少し時間差があって出てくる通信簿ですから、これに文句を言っても仕方ありません。無理やり円高にしようなんて思わない方がいいのです。
円安が今の日本の実力であり、この市場の動きは健全なものです。
むしろ1ドル150円160円でちゃんと栄えていくような、日本経済をつくることの方が大事ではないかと私は思います。これは決して日本にとって悪い話ではなくて、日本経済再生のチャンスになり得る条件なんですね。
もちろん放っておいてはいけません。政府がしっかり公共投資をし、生産基盤を整えて、民間企業も設備投資をする。そして、われわれ国民が効率的によく働くということ。この3つが揃えば、円安なんて全然怖いことはないというのが私の考え方です。
■1ドル160円も…ピークはいつ?
では今後、この円安はどう動くのでしょうか?
今は1ドル143円ぐらいで終始しておりますけれども、為替は24時間動いていますから、本当に気が休まらないですね。しかし一時的な揺り戻しはありつつも、また150円の方向に動いていくと思います。
これはどこまで行くかわかりません。
私は150円には届くと思います。1ドル120円〜130円台に入った頃にも申し上げましたが、これから150円ぐらいまでもちろんジグザグはありますけど、一つの流れになります。今我々はそのトレンド、そのプロセスの中にいると思います。更に160円台を目指す動きも十分にあると思います。
しかし、おそらく来年になっても、FRBは金利をすぐには下げないと思います。
早く金融緩和をやってしまうと、またインフレに火をつけてしまうのでよろしくないということ。これはパウエルFRB議長が最近、繰り返し言っております。そうすると、来年の春になっても、アメリカの金利はなかなか下げに転じないということ。その辺りで円安の一つのピークになりそうです。しかし、それが150円なのか155円なのか、あるいは160円になってしまうのか、その時はわかりません。
これから折に触れて、その予測をしていきたいと思います。
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