前から申し上げていたように、ついに1ドル=150円に到達しました。
この円安について、歴史的な視点からお伝えします。
まずはこの円安の原因は何か?ということですが、メディアでは「アメリカが金利を上げた結果、金利格差でドルが強くなって、円が弱くなっている」ということが言われています。
しかし、これは必ずしもそうではありません。私は昨年の7月頃から、「50年間の円高時代が終わった」という予測をしていました。これはどういうことかと言えば、日本経済全体が弱体化しているということです。
貿易収支は既にもう赤字ですし、経常収支、これもだんだんと赤字化してきています。ですから、日本はこれまで貯めてきた在外資産(海外に持っている資産)を取り崩して、何とか食べていくというプロセスにもう入ってきていると思います。
■歴史で見る円ドル相場の動き
これまでの歴史を見てみると、明治の初めごろは1ドル=1円でした。本格的な戦争が始まる前の昭和9〜11年ごろでも、1ドルはおよそ2円ほどで安定していたと言われています。それが戦後はいきなり1ドル=360円の固定相場制になりました。
しかし、実際に話を聞きますと占領軍がやってきた当初は、1ドル=400〜500円だったと言われます。つまり、1ドル2円だったものが一気に250分の1の通貨価値になってしまったのです。
今から考えるとものすごい円安ですが、それは日本が戦争に負けてしまって、経済が弱くなってしまったからです。日本中がB29の爆撃でやられまして、経済の生産基盤を全て壊されてしまったわけですよね。
一方で、戦後復興を果たした1970年代からはその逆の現象が続いてきました。日本が魅力ある製品を作ってどんどん世界に売り、貿易収支も経常収支も常に黒字である。そして、海外にも資産を持っていて経済的に強い国だったからこそ、円高というものがずっと続いてきたのです。
■過剰評価されていた日本円
やはり人間には記憶がありますから印象が残っています。
日本経済がバブル崩壊を迎えて弱くなっていても、世界的には日本経済が強かった時代のイメージが残っていました。その結果、円高の時代が実際の日本経済の実力よりも長く続いたということなんです。
2011年には、3・11の東日本大震災が起きました。このときは常識的に考えれば 、日本経済が大きなダメージを受けたのだから、円安になるのが当たり前です。ところが、あの時は逆に1ドル=75 円台まで進む恐ろしい円高になりました。
なぜそうなったかというと、「日本は国内でダメージを受けた。だから海外にある資産を売り払って国内にお金を戻すだろう」という理屈で、世界的に円がどんどん買われたからです。
実際にそういう動きをした日本人はいなかったわけですが、この心理が広がると、その思惑だけで円が買われていくわけです。
しかし、それから何年も経って、日本経済=強いというイメージは徐々に失われてきました。
ですから話を戻しますと 、日本がロングタームで経済が弱くなっているということ、それこそが今回の円安の本当の問題なのです。
私に言わせれば、唯一残された日本のバブルが、円高バブルだったのです。その最後の円高バブルが、今まさに崩壊しています。為替というのは言ってみれば「経済の通信簿」で、それも少し時間差があって出てくる通信簿ですから、文句を言っても仕方ありません。
むしろ1ドル=150〜160円でもちゃんと栄えていくような、日本経済をつくることの方が大事ではないかと私は思います。